審査委員会選評
主人公の男性にとって、小学生のころには「黒い町」でしかなかった故郷。彼はその後、長く東京で暮らし、母の死を機にその故郷=佐賀南部の小さな町へ帰ることになります。方言の会話、父母への複雑な思い、そして鮮やかに反転する故郷の風景の色彩……短い文字数の中で、さまざまな感覚を揺さぶってくれる作品でした。
審査委員会選評
東京で就職した主人公の男性は、小学校の同窓会の案内ハガキを手に、当時を回想します。教室での自分の状況、そしてのちの人生をも切り開くことになった「凧ばやし」の太鼓と歌を。本作も子どもから大人への時間の流れを描き、その中で「三条名物 凧揚げばやし」の力強い音色が耳に聞こえてくるような臨場感があります。
審査委員会選評
東京で働く女性の、少女時代の祖母との思い出を描きます。徳島の「阿波おどり」という周知の題材を取り扱いながらも、その浴衣の帯というディテールに焦点を絞ることによって、他の作品とは一線を画する、鮮烈な印象を残します。祖母と自身の「働く女性」の姿を、土地の風物に重ねた重層的な構成も効果的でした。
※以下、順不同